5. 標本ラベル

標本の学術的な価値を決める上で最も大切なのは、標本ラベルです。
その植物を「どこで」「いつ」「誰が」採集したか、などの情報が標本ラベルに正確に記入されていなければ、標本から十分な情報を得ることができないからです。標本ラベルの無い標本は学術研究に活用することが出来ませんので、植物標本館などに寄贈したくても、受け取りを拒否されます。
標本ラベルの書き方は人によって多少異なりますが、最低限必要な情報は「採集地」と「採集年月日」、「採集者名」です。標準的なラベルの大きさは縦7〜10cm、横9〜15cmで、普通紙かやや厚めの中性上質紙に、耐久性の高い(退色しにくい)インクで記入します。

標本ラベルに記入する項目の解説

標本ラベルの記入例1

標本ラベルの記入例2

1タイトル
標本を所有する機関や個人、標本の由来や産地を簡単に示しますが、タイトルが無くても問題はありません。
2種名
学名や和名を記入します。種名がわからない場合は、後で別の人に同定してもらうことができますので、記入しなくても大丈夫です。和名は分かっても学名が分からない(またはその逆の)場合は、各種図鑑類やBG Plants和名-学名インデックス(通称“ylist”、http://bean.bio.chiba-u.jp/bgplants/ylist_main.html)で調べることが出来ます。
3同定者名(“Det.”は“Determinated by”の略)と同定年月日
種名を同定した人の名前と年月日(西暦)を記入します。
4採集地("Loc."は"Locality"の略)
都道府県(海外の場合は国名も)、市町村、山や峠・川・池・島など、採集地の地名をできる限り詳しく記入します。日本語とローマ字表記で併記すると、日本語の読めない外国の人も利用できますし、難しい地名の読みを知ることもできます。なお、地名は時代とともに変わることがありますので、併せて緯度と経度も記録しておくと理想的です。緯度・経度はGPSや地図[地図閲覧サービス「ウオッちず」(http://watchizu.gsi.go.jp/)が便利]で調べることが出来ます。
5生育地("Hab."は"Habitat"の略)と標高("Alt."は"Altitude"の略)
生育地の環境(森林、草地、湿地、川岸、海岸など)と標高を記入します。標高は地形図から読み取るか、高度計で測定しますが、正確に測定できない場合は、例えば“ca.100m”(約100m)や、“50-100m”(50mから100mの間)のような表記でも構いません。
6採集年月日("Date")
年は必ず西暦で表記し、「2010年4月15日」という表記よりも、“Apr.15,2010”や“15-IV-2010”のように、漢字が読めない人でもわかる表記にした方が良いでしょう。
7採集者名("Coll."は"Collector"の略)と標本番号
地名と同様に、採集者の名前も日本語とローマ字表記が併記されていると、誰でも読めますし、難しい人名の読みを知ることもできます(ローマ字表記のみでも構いません)。
標本番号は、採集者が標本を整理・記録するための番号です。異なる標本は番号も異なりますが、同じ個体から複数枚の標本を同時に作成した場合(このような標本を重複標本と呼びます)、同じ標本番号を付けます。
8採集時の記録(“Note”)
標本にすると失われてしまう植物の特徴(樹高や草丈、花・果実の色や香りなど)や生育地の状況(植生や個体数など)を採集時に記録してラベルに記入しておくと、何らかの形で役立つ可能性があります。
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